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ドラマ

トム・ハンクス主演のアカデミー賞受賞作品です。この映画は公開当時はかなり話題となり、多くの人気を獲得しましたが、今でも新鮮でかつ心から楽しめる映画です。映画の作りもとても丁寧で、最初から最後まで安心して観ることができますし、そんな小難しいことを抜きにしてでも、映画の世界に没頭することができます。こういう映画はなかなかそう多くは世の中に出てくるものでないでしょう。

この映画はウィンストン・グルームというアメリカの作家が発表した小説『Gump and Co.』を脚色したものだそうですが、原作そのものが秀逸であるためか、脚本の出来もとても素晴らしく、最初からぐいぐいと物語の中に引き込まれていきます。フォレスト・ガンプという一人の半生をたった二時間半ほどの間に収めて描くというのはかなり大変な作業だったと思いますが、制作者のそんな苦労すら感じさせないほど作品はうまくまとまっていて、ぎゅうぎゅうに数多くのエピソードを詰め込んだという感じも全くしませんでした。そのため、とてもコンパクトな小品を見たという気すらしたぐらいですが、最後の最後にはとてつもない大作を見せてもらえたという感動を覚え、胸が震えるような思いがしたものです。

フォレスト・ガンプの一生はとても波瀾万丈です。恐らくこんなに心が純粋で、数多くの成功を収めた人間などこの世にはいないでしょうが、それでも彼の人生を見ていると、なぜか自分の人生の縮図を見せられているような気がするから不思議です。この映画を観て、忘れかけていた幼い頃の純粋さを思い出し、あの頃の自分を少しでも取り戻したいと考えた人もいたことでしょうし、自分もフォレスト・ガンプのようにひたむきに懸命に生きていきたいと思った人もいたことでしょう。また、彼の数々のサクセス・ストーリーを見ながら、自分もあんな成功を収めてみたいという夢を見た人もいたのではないかと思います。

そんなフォレスト・ガンプとは正反対に、恋人のジェニーは絶えず自分の行くべき道を模索しながら苦悩の日々を送りつづけます。そして、迷いと転落とを重ねた末、最終的には幼なじみであるフォレスト・ガンプこそが自分にとっての心の拠り所であることに気付き、彼と結婚するに至るわけですが、純粋でひたむきに生きるガンプとは対照的なその生き方にもまた自分の人生の縮図を見せられたような気がするから不思議です。言ってみれば、フォレスト・ガンプは、我々人間の中にある幼子のような純粋な心を象徴し、恋人のジェニーは逆に割り切れない何かを常に理詰めで納得させようとする複雑な心を象徴していたのではないかという気がします。原作者にそのような意図が本当にあったかどうかは分かりませんが、このジェニーという存在のお陰で、フォレスト・ガンプの絶対にあり得ないようなおとぎ話的な人生に妙なリアリティを与えていたような感じがします。

この映画のメガホンを取ったのは、パック・トゥ・ザ・フューチャーで知られるロバート・ゼメキスですが、彼がこんなに深い物語をここまで感動的に作り上げたことには一種の驚きを禁じ得ませんでした。彼はこのフォレスト・ガンプを撮影した後、ジョディ・フォスター主演のコンタクトというSF映画を作っているのですが、もしかしたら彼はSF映画なんかを作るよりも、このような深い人間ドラマを作る方がずっと向いているのではないかという気がします。ですから、今後も彼にはこのフォレスト・ガンプ以上の傑作を作り、世に送り出してほしいものだと思いました。

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フォレスト・ガンプ


サスペンス


ヴォルフガング・ペーターゼン監督、クリント・イーストウッド主演のサスペンス・アクション映画です。この映画に出演するまでの数年間、クリント・イーストウッドはなかなか良い出演作に恵まれず、ずっと影を潜めた状態が続いていましたが、この映画で体の無理が利かなくなった年老いた男の役を演じたことによって、それまでにない新たな魅力を作りだし、見事に役者として復活することになりました。この映画以降、クリント・イーストウッドはちょくちょく年老いた男の役を演じるようになり、これが効をそうして再び数多くの映画に出演するようになりましたし、さらには監督としての手腕も大きく発揮するようになりました。

この映画の魅力はクリント・イーストウッドの秀逸な演技もさることながら、なんといっても脚本の素晴らしさにもあると思います。ストーリーの発想が優れていて、何度も何度もその見事さに舌を巻いてしまいます。また、ヴォルフガング・ぺーターゼン独特の地味で渋い演出がまた良い味を出していて、最後まで安心して映画の世界に浸って観ることができました。今ではこの映画も余り話題に上ることはありませんし、レンタルショップに行っても目立たない場所にぽつんと置かれているだけなのですが、見て損はない隠れた名作だとぼくは思います。ヴォルフガング・ぺーターゼンというと、巷では未だにUボートこそが代表作であるかのように言われていますが、ぼく個人としては、このザ・シークレットサービスこそ彼の代表作にしてもいいのではないかと思っているぐらいです。

また、この映画の中で目を惹くのは、ジョン・マルコビッチの怪演です。ジョン・マルコビッチというと、今や名優としての地位に堂々と座しているという感がありますが、彼の才能がこれほどまで遺憾なく発揮された映画というのはこの作品を置いて他にはないのではないでしょうか。彼の一つ一つの仕草、表情にとてつもなく高い計算力が感じられますし、なおかつその計算には何の狂いもなく、度々はっとさせられるような見事な演技を見せてくれています。ハリウッドには数多くの優れた役者がいますが、この映画の中でのジョン・マルコビッチほど切れた演技を見せてくれた俳優はそうはいないでしょう。腕のいいダンサーのダンスを観て感心するのと同じように、この作品の中での彼の演技には心の底から感心せずにはいられませんでした。

しかし、このようにクリント・イーストウッドもジョン・マルコビッチも共に優れた演技を見せることができたのは、やはり何といっても脚本がとても秀逸だったからだと言えるだろうと思います。この作品は表向きこそサスペンス・アクションという形をとっていますが、根本的には深い人間ドラマであり、その奥の深さには思わず深く酔いしれてしまいます。ここ最近のサスペンス・アクションというと、人間ドラマは二の次で、いかに派手なアクションやあっと驚くラストシーンなどで観客を沸かせようとしてばかりしているような感がありますが、このザ・シークレットサービスは緊張感溢れるサスペンスシーンと並行して、素晴らしい人間ドラマをじっくりと楽しませてくれました。これこそまさに知る人ぞ知る傑作と言っていいのではないかと思います。

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ザ・シークレットサービス


サスペンス


24キーファー・サザーランドが名優マイケル・ダグラスと共演を果たした話題作です。この映画の感想を一言で言うと、脚本が少しお粗末すぎたのではないかという感は否めませんでした。マイケル・ダグラスのような大御所がよくこんな作品に出る気になったものだと思いますが、よく考えてみると、マイケル・ダグラスの出演する作品の多くは作品そのものが優れているというより、マイケル・ダグラスの存在感で話題になっている場合が多く、このセンチネルもまたその類の一つだったのだと考えていいのかも知れません。

この作品を見る前は、キーファー・サザーランドマイケル・ダグラスの存在感の影に埋もれてしまいわないかと心配していたのですが、いざ蓋を開けてみると、意外にキーファー・サザーランドが見事にマイケル・ダグラスとうまく渡り合っているので驚いてしまいました。24シリーズはもう既にアメリカではシーズン6まで放映されているようなので、それだけ数多くの芝居を積んだことで、演技の腕にも磨きがかかったのかも知れません。

ただ、24で仲間から濡れ衣を着せられ、窮地に立たされてばかりいたキーファー・サザーランドが、この作品の中では逆にマイケル・ダグラスに濡れ衣を着せ、窮地に追い込む役柄を演じているので、どこか違和感を感じてしまったことは確かです。むしろ彼とマイケル・ダグラスとはそれぞれ逆の役に就いた方が良かったのではないかという気がしないでもありません。その方が24ファンにもしっくり来るし、キーファー・サザーランドの存在感がもっと浮き出たのではないかという気がするのです。もっとも、キーファー・サザーランドには色んな役柄を演じてもらった方が、ファンにとってもキーファー自身のキャリアにとってもより良い影響が出てくるのかも知れませんが。

ただ、最初に言ったとおり、この作品は脚本が余りにもお粗末すぎて、最後まで見終えたときには少し拍子抜けしてしまいました。特にお粗末だったのは、FBI捜査官たちがマイケル・ダグラスに濡れ衣を着せるその理由で、果たして普段から慎重に捜査を進めているはずの捜査官たちが、あれしきの理由で簡単に同僚に容疑をかけてしまうものなのかと思わざるを得ませんでしたし、なおかつ真の容疑者が割り出される過程も余りにもあっけない気がしました。そのため、この映画を見終わって頭に残ったのは、マイケル・ダグラスの圧倒的な存在感とそれに埋もれることなく頑張っていたキーファー・サザーランドの演技だけで、もしかしたらこの作品は、ただ単にキーファー・サザーランドを売り込むための映画だったのではないか、という一抹の疑いすら首をもたげてきた始末でした。

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ザ・センチネル 陰謀の星条旗


コラム

ぼくが贔屓にしている映画監督は今のところ二人います。それはスタンリー・キューブリックジェームズ・キャメロンです。この二人の作品は全て見ましたし、ジェームズ・キャメロンの場合は、彼が監督としてメガホンをとった作品だけではなく、プロデュースした作品もほとんど全て観てきました。その代表作はハート・ブルーストレンジ・デイズですが、この作品についてはまた後にこのブログの中で触れることになるだろうかと思います。

このように自分の好みの監督がメガホンをとっている作品であれば、その映画の評判がどうであれ、実際に面白いかどうかも別として、絶対にその作品を観にいきます。既に上映が終わったものではあれば、必ずそのDVDを観ます。しかし、残念ながらスタンリー・キューブリックはもうこの世にはいませんので、彼の新作がこの世に発表されることは二度とはありませんし、ジェームズ・キャメロンタイタニックで大成功を収めて以来、映画製作の現場から離れてしまって、次の新作が発表されるのも2009年になるという話なので、ぼくにとっては寂しい限りの状況が続いています。

本当の映画好きというのは、このように好きな映画監督の一人や二人は絶対にいると思うのですが、映画というのは音楽や小説とは違って、かなり大勢の人間によって制作されるものですので、監督の持っている個性がなかなか作品の中に反映されにくいという一面があります。特にハリウッド映画の場合はそうです。ハリウッドのどの映画を観ても似たり寄ったりという感じは否めません。ですから、よほどの映画好きでない限り、どの映画をどの監督が撮ったかということはなかなか分からないだろうと思います。第一、小説の場合だと、一人の作家がSFもミステリーも、あるいはホラーもラブロマンスも書くということはほとんどあり得ませんが、映画の場合だと、一人の監督が実に様々な種類の作品を作るということがよくあります。ぼくが好きなスタンリー・キューブリックも、SFからホラー、戦争映画からシリアスドラマまで実に様々なジャンルの映画を手がけていますので、仮に彼の全ての作品を観たとしても、それらの作品がすべて同じ一人の監督によって撮影されているとは、よほど映画に詳しい人でない限り分からないだろうと思います。

このような結果になってしまうのは、映画の場合にはかなりの資金がかかり、そのコストを上回る収益を確保しなければならないという問題がありますので、制作者サイドが監督の個性ばかりを全面的に押し出すことを忌避するという傾向もあるのでしょう。裏を返せば、自分の個性を全面的に押し出して映画を作れる監督というのは、それだけ周囲から信頼されている監督だという証拠になるわけですが、残念ながら、そのような才能に溢れた監督はなかなかそう簡単に世に出てくるものではありません。特に大金がかかるハリウッドでは、多くの監督が雇われ監督としての地位に甘んじなければならない場合がほとんどのようです。

そんな中で、スタンリー・キューブリックジェームズ・キャメロンは自分の個性をその作品の中で存分に発揮しているように見受けられます。だからこそ彼らは二人は、ぼくのような映画好きにはよく好まれるのです。しかも、彼らの持っている個性は特に突飛なものではなく、万人に受け入れられやすいものですから、彼らの作品の多くが大ヒットを飛ばすことにもなったのだろうと思います。そして何より、この二人はとても丁寧に一つ一つの作品を作っています。どのシーンを観ても必ずこだわりがあり、なおかつ粗がない。もっとも、今から何十年前に撮られた映画というのは、映画製作の技術が今ほど進歩してはいませんでしたので、全く粗がないといえば嘘になりますが、それでも同年代に撮られた他の映画に比べればその出来映えには雲泥の差があります。まさに映像の精密細工を観ているという感すらします。

したがって、彼ら二人の作品は何度でも飽きることなく鑑賞することができますし、むしろ観れば観るほど新たな発見や感動があります。彼ら以外にもこのような才能を持った監督が出てくれればと願っているのですが、ハリウッドの中で監督としてスターダムに上り詰めるには、単に才能だけではなく、運にも環境にも恵まれなければならないはずですので、今後も彼らのような才能が現れることはなかなかないかも知れません。

一応、参考までに彼ら二人の作品の中で、特にぼくの気に入っている作品を紹介しておきます。

ジェームズ・キャメロン監督作品

エイリアン2 完全版
アビス 完全版
ターミネーター2
トゥルーライズ
タイタニック

ジェームズ・キャメロンプロデュース作品

ハート・ブルー
ストレンジ・デイズ

スタンリー・キューブリック監督作品

ロリータ
2001年宇宙の旅
時計じかけのオレンジ
バリー・リンドン
シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン
フルメタル・ジャケット

 

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文芸

芥川龍之介原作の小説薮の中を世界の黒澤明が映画化した作品です。この映画はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得し、黒澤明の名を世界に知らしめるきっかけともなりました。黒澤明というと、影武者七人の侍といった時代劇が有名ですが、ぼく個人はどちらかというとこの羅生門生きるといったシリアスなドラマの方が好きです。

この映画はタイトルが地味なせいか、最近では余り多くの人に観られていないようですが、脚本がとても緻密な計算と人間観察力によって作られていますので、見終わった後には重厚な文学作品を読了したかのような圧倒的な気分にさせられます。特にこの映画でひときわ目につくのが、対立する複数の視点から同じ出来事を全く違ったように回想し、真実がどうだったのか観客を混乱させてしまうという手法ですが、これは今でも観ていてとても新鮮で、よくこんな昔にこんな手法が思い付いたものだと心から感心してしまいました。恐らくこのような映画は、他の監督が作ろうとしてもそう簡単に作れるものではないだろうと思います。かつての日本映画界には、本当に優秀な人材がいたのだなとつくづく実感させられました。

最近の映画はとかく表面だけは立派で華々しく、中身の薄っぺらなものが多いように見受けられますが、この羅生門はタイトルこそ地味ながら、内容の濃い味わい深い作品に仕上がっています。芥川龍之介としても、自分の書いた小説をここまで見事な映画にしてもらえば本望ではないでしょうか。

未だに黒澤明の人気は衰えていないので、レンタルショップに行けば、この羅生門も他の黒沢作品に並んできちんと陳列されてあります。文学に興味のある人もない人も、内容の濃い深い映画を観たいという向きにはぜひともお勧めしたい一本です。

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羅生門 デラックス版