ドラマ
このパーフェクト・ワールドという作品は妙に心に残る映画です。この作品はクリント・イーストウッドが監督を務めていて、彼の作品にしては少し荒削りで完成度もそれほど高くはないのですが、ストーリーの素晴らしさがそんな欠点をほとんど覆い隠しているように思いました。
この作品で最もぼくが頂けなかったのは、主人公を演じたケビン・コスナーの演技でした。彼はダンス・ウィズ・ウルブスでブレイクしたせいか、その後やたらとワイルドな役柄ばかりを演じるようになりましたが、彼には元々そんなワイルドな役は似合わないような気がするのです。彼の容姿はそれほど野性的な感じではありませんし、むしろ育ちの良い坊ちゃんという感じがします。もっとも、これはぼくの個人的な主観に過ぎないのかも知れませんが、現にこのパーフェクト・ワールドの中で脱獄犯という役を演じているケビン・コスナーは、どこからどう見てもミスキャストのように思えてなりませんでした。いっそのこと、脱獄犯はクリント・イーストウッド自身が演じて、ケビン・コスナーはその脱獄犯を追う刑事の役をやった方が良かったのではないかと思います。
ケビン・コスナーは悪者になりきれておらず、その悪い本性を剥き出しにするシーンも、なんだか妙に不自然で全く恐ろしさが伝わってきませんでした。彼が乱暴に暴れたとしても、単に酒に酔った酔いどれが暴れているぐらいにしか見えず、凶暴な殺人犯のようには見えないのです。そのため、悪人が善良な心を取り戻していくというストーリーもリアリティがなく、どこか白々しいものすら感じてしまったほどです。とはいえ、脚本そのものがとてもよくできていますので、結局、最後まで興味津々と観てしまいましたし、最後の感動的なシーンには心から拍手を送っていました。
クリント・イーストウッドは、この作品を作る前に許されざる者という映画を作り、アカデミー作品賞と監督賞を獲得したのですが、そんな凄腕を持った監督にしては少し間の抜けた映画だと思いました。しかし、そんなぎこちなさがかえってこの映画に妙な親しみを感じさせる要因にもなっているような気がします。小難しいことは抜きにして、映画に静かな感動を求めているという方にはお勧めできる一本かも知れません。

