ドラマ
押しも押されぬ大人気作となったタイタニックです。このタイタニックが達成した全世界興行収入18億3000万ドルという記録は未だに破られておらず、いかにこの作品が物凄い大ヒットを記録したかがよく分かります。
この映画はぼくが最も尊敬するジェームズ・キャメロン監督によって製作されました。この映画が素晴らしかったのは、脚本はもちろんのこと、そのリアリティ溢れるセットやCGでしょう。ジェームズ・キャメロンは、それまでアビスやターミネーターといったSF作品を多数手がけてきましたが、どの作品のセットにも娯楽映画らしからぬ徹底したこだわりぶりを見せてきました。映画で初めてCGを使用したのもこのジェームズ・キャメロンで、映画のリアリティを追求する余り、結果的にCGなるものを開発するしかなかったのでしょう。そんな彼らしいセットへのこだわりがこのタイタニックの中にも随所に表れていて、それが感動的な物語をより効果的に盛り上げていたように思います。最初に映画館でこの映画を観たときには、その余りのリアリティに圧倒され、背筋が凍り付いてしまったほどでした。
しかし、この作品がこれほどのヒットを飛ばすとは当初は誰も予想してはいませんでした。むしろ、制作費はべらぼうに嵩み、映画の上映時間も三時間にも及ぶ長大なものとなってしまったため、大方の業界人たちがマイケル・チミノ監督の天国の門のような大失敗に終わるだろうと見ていたのです。(この天国の門の興行成績は3,484,331ドルでしたが、約4000万ドルもの赤字を出し、制作会社ユナイテッド・アーティスツは倒産に追い込まれ、一時期ギネスブックに「史上最悪の赤字を出した映画」として掲載されたそうです。)しかしジェームズ・キャメロンはそんな冷たい風評にさらされながらも、情熱をもってこの映画の製作に取り組みつづけました。驚くべきことに、スポンサーからの出資で賄いきれなかった制作費を、自ら捻出してまでして映画の完成にこぎつけたそうです。
もちろん、いかに強い情熱をもって努力したとしても、確固たる才能と実力がなければ成功はなかなか難しいものですが、果たしてこのジェームズ・キャメロンは映画史上に燦然と輝く偉大な功績を残しました。この映画が公開された当時、アメリカではもはや社会現象にまでなり、ニューズウィーク誌でも毎週のように特集が組まれていたほどです。この状況には、昔からのジェームズ・キャメロンのファンであったぼくは心の底から飛び上がって喜んだものでした。
この映画は1998年のアカデミー賞において最多タイの、作品賞、監督賞、撮影賞、主題歌賞、音楽賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、音響効果賞、音響賞、編集賞の11部門で受賞しました。しかし、残念なことに、この映画に出演した俳優、女優たちは一人として主演賞や助演賞を得ることはできませんでした。その点だけがジェームズ・キャメロンのいつものネックで、もともと根っからの理系人間である彼には、人間そのものを表現する能力が若干弱いのかも知れません。
一応、この映画で主演を演じていたレオナルド・ディカプリオも一躍、時代の寵児へとのしあがりましたが、その後の出演作はどれも余りパッとせず、興行成績もふるいませんでした。彼がギルハギート・グレイプという映画で見せたような秀逸な演技はどこに行ってしまったのでしょうか。やはり幼い頃にこのような大成功を収めてしまうと、どうしても心の緊張が緩み、向上心がなくなってしまうものなのでしょうか。考えてみると、同じジェームズ・キャメロン監督作のターミネーター2で子役を演じたエドワード・ファーロングもその後は大したオファーもなく、麻薬漬けの堕落した人生を歩むようになってしまったそうですが、そういう意味で、このジェームズ・キャメロンはとても罪作りな監督かも知れません。
話が少し脇に逸れてしまいましたが、ぼく自身もこのタイタニックは星の数ほどある映画の中でも最高と言ってもいい素晴らしい作品だと思っています。多分、こんなに完成度の高い映画は一生の間に一本出るかでないかというところでしょう。この映画を見て一度目が肥えてしまうと、他のどの映画を見ても物足りない気がしてしまうぐらいです。こんな映画に一生の間に巡り会えただけでも本当に素晴らしい体験だったと思いますし、それこそ最後にジャックがローズに言い残したように感謝の気持ちでいっぱいだという思いです。

