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ドラマ

トム・ハンクス主演のアカデミー賞受賞作品です。この映画は公開当時はかなり話題となり、多くの人気を獲得しましたが、今でも新鮮でかつ心から楽しめる映画です。映画の作りもとても丁寧で、最初から最後まで安心して観ることができますし、そんな小難しいことを抜きにしてでも、映画の世界に没頭することができます。こういう映画はなかなかそう多くは世の中に出てくるものでないでしょう。

この映画はウィンストン・グルームというアメリカの作家が発表した小説『Gump and Co.』を脚色したものだそうですが、原作そのものが秀逸であるためか、脚本の出来もとても素晴らしく、最初からぐいぐいと物語の中に引き込まれていきます。フォレスト・ガンプという一人の半生をたった二時間半ほどの間に収めて描くというのはかなり大変な作業だったと思いますが、制作者のそんな苦労すら感じさせないほど作品はうまくまとまっていて、ぎゅうぎゅうに数多くのエピソードを詰め込んだという感じも全くしませんでした。そのため、とてもコンパクトな小品を見たという気すらしたぐらいですが、最後の最後にはとてつもない大作を見せてもらえたという感動を覚え、胸が震えるような思いがしたものです。

フォレスト・ガンプの一生はとても波瀾万丈です。恐らくこんなに心が純粋で、数多くの成功を収めた人間などこの世にはいないでしょうが、それでも彼の人生を見ていると、なぜか自分の人生の縮図を見せられているような気がするから不思議です。この映画を観て、忘れかけていた幼い頃の純粋さを思い出し、あの頃の自分を少しでも取り戻したいと考えた人もいたことでしょうし、自分もフォレスト・ガンプのようにひたむきに懸命に生きていきたいと思った人もいたことでしょう。また、彼の数々のサクセス・ストーリーを見ながら、自分もあんな成功を収めてみたいという夢を見た人もいたのではないかと思います。

そんなフォレスト・ガンプとは正反対に、恋人のジェニーは絶えず自分の行くべき道を模索しながら苦悩の日々を送りつづけます。そして、迷いと転落とを重ねた末、最終的には幼なじみであるフォレスト・ガンプこそが自分にとっての心の拠り所であることに気付き、彼と結婚するに至るわけですが、純粋でひたむきに生きるガンプとは対照的なその生き方にもまた自分の人生の縮図を見せられたような気がするから不思議です。言ってみれば、フォレスト・ガンプは、我々人間の中にある幼子のような純粋な心を象徴し、恋人のジェニーは逆に割り切れない何かを常に理詰めで納得させようとする複雑な心を象徴していたのではないかという気がします。原作者にそのような意図が本当にあったかどうかは分かりませんが、このジェニーという存在のお陰で、フォレスト・ガンプの絶対にあり得ないようなおとぎ話的な人生に妙なリアリティを与えていたような感じがします。

この映画のメガホンを取ったのは、パック・トゥ・ザ・フューチャーで知られるロバート・ゼメキスですが、彼がこんなに深い物語をここまで感動的に作り上げたことには一種の驚きを禁じ得ませんでした。彼はこのフォレスト・ガンプを撮影した後、ジョディ・フォスター主演のコンタクトというSF映画を作っているのですが、もしかしたら彼はSF映画なんかを作るよりも、このような深い人間ドラマを作る方がずっと向いているのではないかという気がします。ですから、今後も彼にはこのフォレスト・ガンプ以上の傑作を作り、世に送り出してほしいものだと思いました。

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フォレスト・ガンプ


押しも押されぬ大人気作となったタイタニックです。このタイタニックが達成した全世界興行収入18億3000万ドルという記録は未だに破られておらず、いかにこの作品が物凄い大ヒットを記録したかがよく分かります。

この映画はぼくが最も尊敬するジェームズ・キャメロン監督によって製作されました。この映画が素晴らしかったのは、脚本はもちろんのこと、そのリアリティ溢れるセットやCGでしょう。ジェームズ・キャメロンは、それまでアビスターミネーターといったSF作品を多数手がけてきましたが、どの作品のセットにも娯楽映画らしからぬ徹底したこだわりぶりを見せてきました。映画で初めてCGを使用したのもこのジェームズ・キャメロンで、映画のリアリティを追求する余り、結果的にCGなるものを開発するしかなかったのでしょう。そんな彼らしいセットへのこだわりがこのタイタニックの中にも随所に表れていて、それが感動的な物語をより効果的に盛り上げていたように思います。最初に映画館でこの映画を観たときには、その余りのリアリティに圧倒され、背筋が凍り付いてしまったほどでした。

しかし、この作品がこれほどのヒットを飛ばすとは当初は誰も予想してはいませんでした。むしろ、制作費はべらぼうに嵩み、映画の上映時間も三時間にも及ぶ長大なものとなってしまったため、大方の業界人たちがマイケル・チミノ監督の天国の門のような大失敗に終わるだろうと見ていたのです。(この天国の門の興行成績は3,484,331ドルでしたが、約4000万ドルもの赤字を出し、制作会社ユナイテッド・アーティスツは倒産に追い込まれ、一時期ギネスブックに「史上最悪の赤字を出した映画」として掲載されたそうです。)しかしジェームズ・キャメロンはそんな冷たい風評にさらされながらも、情熱をもってこの映画の製作に取り組みつづけました。驚くべきことに、スポンサーからの出資で賄いきれなかった制作費を、自ら捻出してまでして映画の完成にこぎつけたそうです。

もちろん、いかに強い情熱をもって努力したとしても、確固たる才能と実力がなければ成功はなかなか難しいものですが、果たしてこのジェームズ・キャメロンは映画史上に燦然と輝く偉大な功績を残しました。この映画が公開された当時、アメリカではもはや社会現象にまでなり、ニューズウィーク誌でも毎週のように特集が組まれていたほどです。この状況には、昔からのジェームズ・キャメロンのファンであったぼくは心の底から飛び上がって喜んだものでした。

この映画は1998年のアカデミー賞において最多タイの、作品賞、監督賞、撮影賞、主題歌賞、音楽賞、衣裳デザイン賞、視覚効果賞、音響効果賞、音響賞、編集賞の11部門で受賞しました。しかし、残念なことに、この映画に出演した俳優、女優たちは一人として主演賞や助演賞を得ることはできませんでした。その点だけがジェームズ・キャメロンのいつものネックで、もともと根っからの理系人間である彼には、人間そのものを表現する能力が若干弱いのかも知れません。

一応、この映画で主演を演じていたレオナルド・ディカプリオも一躍、時代の寵児へとのしあがりましたが、その後の出演作はどれも余りパッとせず、興行成績もふるいませんでした。彼がギルハギート・グレイプという映画で見せたような秀逸な演技はどこに行ってしまったのでしょうか。やはり幼い頃にこのような大成功を収めてしまうと、どうしても心の緊張が緩み、向上心がなくなってしまうものなのでしょうか。考えてみると、同じジェームズ・キャメロン監督作のターミネーター2で子役を演じたエドワード・ファーロングもその後は大したオファーもなく、麻薬漬けの堕落した人生を歩むようになってしまったそうですが、そういう意味で、このジェームズ・キャメロンはとても罪作りな監督かも知れません。

話が少し脇に逸れてしまいましたが、ぼく自身もこのタイタニックは星の数ほどある映画の中でも最高と言ってもいい素晴らしい作品だと思っています。多分、こんなに完成度の高い映画は一生の間に一本出るかでないかというところでしょう。この映画を見て一度目が肥えてしまうと、他のどの映画を見ても物足りない気がしてしまうぐらいです。こんな映画に一生の間に巡り会えただけでも本当に素晴らしい体験だったと思いますし、それこそ最後にジャックがローズに言い残したように感謝の気持ちでいっぱいだという思いです。

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タイタニック アルティメット・エディション


このパーフェクト・ワールドという作品は妙に心に残る映画です。この作品はクリント・イーストウッドが監督を務めていて、彼の作品にしては少し荒削りで完成度もそれほど高くはないのですが、ストーリーの素晴らしさがそんな欠点をほとんど覆い隠しているように思いました。

この作品で最もぼくが頂けなかったのは、主人公を演じたケビン・コスナーの演技でした。彼はダンス・ウィズ・ウルブスでブレイクしたせいか、その後やたらとワイルドな役柄ばかりを演じるようになりましたが、彼には元々そんなワイルドな役は似合わないような気がするのです。彼の容姿はそれほど野性的な感じではありませんし、むしろ育ちの良い坊ちゃんという感じがします。もっとも、これはぼくの個人的な主観に過ぎないのかも知れませんが、現にこのパーフェクト・ワールドの中で脱獄犯という役を演じているケビン・コスナーは、どこからどう見てもミスキャストのように思えてなりませんでした。いっそのこと、脱獄犯はクリント・イーストウッド自身が演じて、ケビン・コスナーはその脱獄犯を追う刑事の役をやった方が良かったのではないかと思います。

ケビン・コスナーは悪者になりきれておらず、その悪い本性を剥き出しにするシーンも、なんだか妙に不自然で全く恐ろしさが伝わってきませんでした。彼が乱暴に暴れたとしても、単に酒に酔った酔いどれが暴れているぐらいにしか見えず、凶暴な殺人犯のようには見えないのです。そのため、悪人が善良な心を取り戻していくというストーリーもリアリティがなく、どこか白々しいものすら感じてしまったほどです。とはいえ、脚本そのものがとてもよくできていますので、結局、最後まで興味津々と観てしまいましたし、最後の感動的なシーンには心から拍手を送っていました。

クリント・イーストウッドは、この作品を作る前に許されざる者という映画を作り、アカデミー作品賞と監督賞を獲得したのですが、そんな凄腕を持った監督にしては少し間の抜けた映画だと思いました。しかし、そんなぎこちなさがかえってこの映画に妙な親しみを感じさせる要因にもなっているような気がします。小難しいことは抜きにして、映画に静かな感動を求めているという方にはお勧めできる一本かも知れません。

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パーフェクト ワールド


ここ数年間というもの、日本映画はずっと下火の状態が続いてきました。最近になって少しずつ興行成績も伸びはじめ、昨年は日本国内では洋画よりも邦画の方が売り上げが良かったそうですが、ここに辿り着くまでには相当な年月がかかってしまいました。実はこのぼく自身、この数年間は日本映画にほとんど無頓着で、黒澤明溝口健二といった白黒時代の監督の作ったものを観ることはあっても、最近の監督の作った映画にはほとんど見向きもしませんでした。

そんな中、唯一、ぼくが興味を持っていたのが伊丹十三監督でした。彼がお葬式という映画でデビューしたとき、その余りに緻密な人間観察力に驚き、俳優たちのリアルな演技力に圧倒されたのを覚えています。お葬式なんて題名もなんだか少し嫌な感じがしましたし、どうせ下らない映画だろうと思って最初は興味も湧かなかったのですが、実際に観たときには、監督の溢れんばかりの才能に敬服の念さえ抱かずにはいられませんでした。

そんな伊丹十三監督の出世作がこのマルサの女です。この映画で伊丹十三監督はヒットメーカーとしての地位を築き上げ、その後もマルサの女2ミンボーの女などでどんどん知名度を上げていきました。彼の数ある作品の中で、ぼくが最も気に入っているのがこのマルサの女マルサの女2です。伊丹十三はどの作品もコミカルタッチに仕上げていますが、沢山の作品を出していくに連れて、人間の描写が少しずつ荒くなり、最後にはほとんど漫画のようになってしまうのですが、このマルサの女マルサの女2では、どの登場人物もとてもリアルに描かれていて、誰を見ても現実にどこかにいそうな人たちばかりです。他の映画ではそんなにパッとしなかった俳優も、ひとたび伊丹十三監督の下で演じると、存在感溢れる名優に早変わりしてしまうのです。

伊丹十三監督は、大手の映画会社の下で映画を製作したわけではなく、自らが事業主となって映画を製作しはじめました。これをインディペンデンス系の監督と言われるのですが、当時はこのようなインディペンス系の監督は数が限られていましたし、ましてその名が売れる監督も余りいませんでした。大手の映画会社に比べれば、その資金力も限られているわけですから当然といえば当然なのですが、この伊丹十三監督はそんな過去のジンクスを吹き飛ばして、一躍売れっ子の監督となったのですから、やはり相当な才能があったということは疑いのないことでしょう。

日本の俳優の演技はとかく嘘くさくて、子供の学芸会でも見ているような気分にさせられることが多々ありますが、伊丹十三監督はどの俳優たちにも下手な演技を許しません。マルサの女にはマルサの女をマルサする〈周防正行監督作品〉、およびマルサの女2をマルサする〈周防正行監督作品〉というメイキングビデオがあって、それを見れば分かることですが、伊丹十三はどんな些細なシーンでもリアルな演技ができるまで俳優たちに何度でも繰り返し演じさせています。その徹底ぶりがどのシーンにも如実に現れていて、俳優たちのその迫真の演技は見ている我々に息つく暇も与えてはくれません。特にぼくの印象に残っているのは、マルサの女伊藤四郎マルサの女2三國連太郎です。伊藤四郎はIQサプリなんて番組の司会者なんかやっていないで、もっともっと芝居をやっていた方がいいのではないか……というのがぼくの率直な意見です。

残念ながら、皆さんもご存じの通り、伊丹十三監督はもう既にこの世にはいません。一世を風靡した映画監督がいなくなるというのは、映画好きのぼくみたいな人間にはとても寂しい限りですが、今後も彼のような才能溢れる監督が誕生してくれることを願うばかりです。

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伊丹十三DVDコレクション マルサの女 コレクターズセット (初回限定生産)


このタブロイドという作品はてっきりハリウッド映画だと思っていたのですが、実はエクアドルで製作された映画だと知ってとても驚きました。エクアドルというのは映画製作のレベルがこれほど高い国なのでしょうか。それとも、この映画だけがたまたま突出して優れているだけなのでしょうか。そう言えば、今話題になっているバベルの監督もメキシコ出身だそうで、もしかしたら南米は知られざる才能の宝庫なのかも知れません。

この映画では先ず最初に治安が悪く、人々の生活も貧しいという国の実情が伝えられています。その臨場感は抜群で、映画を観ているだけなのに、本当に南米に行ったような気分にさせられます。また、話の内容は至ってシンプルなのですが、そのシンプルさが逆に新鮮で、無駄のない潔い作り方にはむしろ感心させられてしまいます。しかも、最後まで緊張感が絶えず持続し、決して観る人を飽きさせることはありません。

俳優たちの演技にもとても感心しました。特に「モンスター」と称する犯罪者を演じた男性の演技は秀逸でした。彼は心の中に大きな混乱を抱えて生きていますが、普段は決してその混乱を表に出すことはありません。したがって、俳優もその混乱を大袈裟に演じてはいけないし、抑制された中でそれを演じなければならないのですが、この俳優はその役柄を見事に演じきっています。まさに目だけで全てを語っているのです。そのため我々観客は、いつしか彼が演技をしていることも忘れて、彼の心の中にある苦悩を汲み取ろうとします。そして、汲み取ろうとしてなかなか汲み取れないジレンマに陥ってしまうのです。

これは本当に思いかげない名作でした。最後まで飽きることなく、緊張を緩めることなく観られる映画です。少し地味な作品ではありますが、ハリウッドの派手な映画に少し飽き飽きしている向きにはお勧めできる映画ではないかと思います。

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タブロイド


新興宗教の教祖まがいのSEX伝道師や、今際の際にあるその父親、父親の後妻、看護師、子供のころクイズ王だったダメ男、今、天才と騒がれている少年など、一見、相互に無関そうに見える10人以上の男女の24時間を描く群像劇です。最初のうちは次から次へと色んな人物が登場してくるので、何がなんだか訳が分からないままストーリーが展開していくのですが、物語が進んでいくに連れて、全ての登場人物がそれぞれどこかで密接な繋がりを持っていて、なおかつ互いが互いの支えを必要とし合っていることが明らかになっていきます。そのストーリー展開はとても鮮やかで壮麗で、まるで壮大な絵巻物を観ているような気分にさせられるほどです。

この映画を作った監督はポール・トーマス・アンダーソンといって、若干29歳のときにこの映画を生み出しました。その若さでよくぞここまで人間心理の奥底を詳しく緻密に描けたものだと、その人間観察力には憧憬の念を覚えずにはいられなかったほどです。実際、この映画を観た多くの人が、この映画の中に自分に重なる人物を発見したはずですし、そんな彼らの生き様や考え方に深い共感を覚えたのではないでしょうか。

この映画はベルリン映画祭でも金熊賞を受賞しました。まさにポール・トーマス・アンダーソンは29の若さにして天才の仲間入りを果たしたというわけです。ぼくもそんな彼に尊敬の念を抱きましたが、その次に作った映画パンチドランク・ラブが完全な駄作だったので、彼に対する熱もあっという間に冷めてしまいました。どうやらこのマグノリアは監督の一人の力だけによるものではなく、優秀なスタッフたちによって奇跡的に生み出された作品だったようです。もっとも、パンチドランク・ラブもカンヌ映画祭で監督賞を受賞したようなので、観る人によっては傑作に見えた作品だったようですが、ぼく個人としてはカンヌ映画祭など審査基準の分からない信頼できない賞だと思っているので、だからといって、この映画に対するぼくの評価が変わるものではありません。

このマグノリアでもう一つ注目すべき点は、トム・クルーズが主役とも脇役ともとれない微妙な役を演じていることでしょう。トム・クルーズがこんな地味な群像劇で演じることはほとんどあり得ないことですが、もちろん彼がこの映画の中で手を抜くようなことは決してなく、今までにない一風変わった役どころをとても個性的に表現豊かに演じてくれています。トム・クルーズというと、トップ・ガンで最初に名を馳せた頃は、その整った容姿ゆえに演アイドル的な感じの俳優に見えたものですが、今では演技派としての地位をしっかりと確立し、単なる顔だけの俳優ではないことを実証しきっています。そんな彼の才能がこの映画の中でも遺憾なく発揮されていますので、トム・クルーズ・ファンの中でまだこの映画を観ていない方にもぜひとも観ていただきたいと思います。

また、トム・クルーズにも負けず劣らず、他のどの俳優たちもそれぞれ見事な演技を見せています。彼らのとてもリアリティ溢れる演技のお陰で、一通り映画を見終わったときには、彼ら全員の姿が頭の中に深くこびりついて離れないぐらいです。これこそまさに知る人ぞ知る名作と言っていいでしょう。

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マグノリア


実在した麻薬王、ジョージ・ユングの半生を描いた映画です。犯罪者がどんな人生を送ったかなんてどうでもいいことだと思って、この映画は公開されてからしばらくの間ずっと相手にもしていなかったのですが、実際に観てみると深く考えさせられる部分が幾つもありました。

主人公自身、最初に麻薬を売ることに手を染めたのは、大物のディーラーになろうとか、世界を騒がす犯罪者になろうとかいった野心があったわけではなく、本当に軽い出来心からでした。しかし、少し麻薬を売っただけで大量のお金が手に入るため、その快感が癖になり、麻薬を売ることから手を引けなくなってしまいます。果てにはいつしかやり手の麻薬密売人として業界内でもその名を知られることになり、巨額の金を手にいれて妻とともに贅沢三昧の日々を送るようになる。そして、これからもずっとこんな幸せな日々が続くものかと思いきや、最後には転落の人生を迎えてしまう。

結局、悪いことをしてどんなに私服を肥やしたとしても、最後に待っているものは悲惨な結末でしかないということでしょうか。ここ最近、多くの政治家たちによる不正会計が世間で騒がれていますが、悪いことをして金を手に入れたところで、待っているのは世間からの集中砲火ですし、そのときには自分だけではなく家族やその周囲の人まで迷惑を被ることになる。そのため、周囲の人たちはどんどん愛想を尽かして、その人から離れていってしまう。どんなに悪いことをして一時的にいい思いをしたとしても、最後に待っているのは悲惨な結末でしかないわけですが、自分の行った悪が明るみに出されるまでは、なかなかそのことにも気付かないものなのかも知れません。そんなことを深く考えさせられた素晴らしい映画でした。

映像は全編に渡ってとても美しく、ジョニー・デップの演技も冴えていました。もっとも、個人的にはジョニー・デップの演技にはところどころ注文をつけたくなるところもありましたが、主人公の心の悲しみが深く心に伝わってきたのは確かです。競演したベネロペ・クルスもとても印象的で、映画を観てからしばらくの間はやつれ果てた彼女の姿が頭から離れませんでした。とにかく、極めて芸術性の高い映画だったと思います。ちなみにブロウとは、コカインの俗称だそうです。

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ブロウ


マッカーシー批判と呼ばれる歴史的事件を背景に、時の権力者に立ち向かった男たちの物語です。多くの映画レビューを観ると、この作品はかなり好意的に受け入れられているようですが、ぼく個人としては映画としてもう少し工夫が欲しいと思いました。この映画を監督したジョージ・クルーニーは、リアリティを高めるために全編を白黒にしてしまいましたが、映像だけではなくもう少し脚本にも拘ってもらいたかった。というのも、この映画を観た限りでは、主人公たちの受けた圧力がそれほど大したものには見えなかったからです。なんだかあっという間に嵐が過ぎ去ったという感じで、緊迫感はほとんど感じられませんでした。

現実に受けた圧力が、実際にほんの一時的なものだったのかも知れませんが、それでもこれは一応は映画なのですから、もう少し緊張感のある作り方をしてもらいたかった。これでは、主人公が巨悪に立ち向かった勇気ある者という風には見えず、政治家とほぼ互角に戦った人という感じがしてなりません。ジョージ・クルーニーの監督としての手腕がまだその程度だったということなのでしょうか。

とはいえ、マスコミ関係者の中にはこの映画が励みになったという方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。マスコミというのは、常に政治家や企業など、強者の不正を正していく立場にあるので、ときには様々な圧力を受けて苦しむこともあるでしょう。特にニュース・キャスターは、テレビの画面に前面的に押し出されるため、他のスタッフよりも数倍、数十倍激しいやり玉にあげられることもあるのではないでしょうか。とても大変な仕事だと思いますが、悪いものを悪いとはっきりと言う人がいない限り、この世の不正はいつまでも正されないわけですから、数多くのニュース・キャスターにはこれからも頑張っていってもらいたいものだと思います。

ただ、ここ最近では、NHKの不正会計、「あるある大辞典」での虚偽報道など、マスコミの不正が大きく取り沙汰されています。マスコミがそのような体質を持っていては、どうやって政治家や企業を批判することができるというのでしょう。現代でもこうなのに、ましてまだ時代が成熟しきっていなかった時代に、時の権力者に対してはっきりとNOと言うことができたこの映画の主人公は、やはり時代の先駆けとも言うべき偉大な人物だったのかも知れません。

ちなみに、この映画の主人公はニュースを読み上げる間ずっと煙草を手に持っていて、嫌煙ブームが進んでいる現代の我々からすると少しぎょっとするのですが、実はこのニュース番組のスポンサーは煙草会社だったそうで、その会社から画面に煙草を出すようにとの強い要請があったのでしょう。その後このニュースキャスターは、肺ガンを患って死んでしまったようで、煙草会社に殺されてしまった哀れな犠牲者の一人だったと言えるかも知れません。

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グッドナイト&グッドラック 通常版


武器商人の危険な裏側を描いた作品です。テレビで見て知ったことですが、ぼくらがこうして普通に生活している間にも、世界では一秒間に400万円ほどの武器が使用されているそうです。戦争で苦しんでいる人たちの影で、武器商人たちがいかに暴利を貪っているかが窺い知れるというものでしょう。もはやこの映画は、作品としての良し悪しよりも、そのような暗い現実をリアルに描いたという部分で高く評価できるのではないでしょうか。

ぼくはかつて広瀬隆というノンフィクション作家の本アメリカの巨大軍需産業を読んで、武器商人たちが自分たちの利益のために世界各国の首脳たちと政略結婚をし、次々に戦争を起こしてきた歴史があるということを知りましたが、この映画ではその武器商人の生き様にスポットを置いて描かれている点でとても大きな衝撃を受けました。しかもこの映画のラストはさらに衝撃的で、結局、いくら武器を不正に輸出入したところで絶対に捕まることのない現実が描かれています。

人の不幸によって一部の人が暴利を得るという構図。確かにこんなことがあっていいのだろうかと首を傾げたくもなりますが、だからといって誰一人として兵器を作らなくなれば、どこかで誰かが悲鳴をあげることになります。実際、現在の日本でも、北朝鮮に対抗するために武力を強化するべきだという議論が囁かれていて、確かに今の日本に何の武力もなければ、一発で北朝鮮の標的になりかねないでしょう。したがって、どこかの国が武力を持てば、隣の国もまたそれに対抗して武装しなければならないわけで、結局、いたちごっこはいつまでも際限なく続くわけです。

一応、そのような現実を知るためにもこの映画は一度は観ておいた方がいいのではないでしょうか。映画としての出来もかなり上質なものだと思いますし、深刻なテーマでありながらもかなり分かりやすく面白く描かれていますので、少し言葉に語弊があるかも知れませんが、気楽な気持ちで楽しんで観てもらいたい作品だと思います。

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ロード・オブ・ウォー


発展途上国から暴利を貪ろうとする製薬会社の裏側を描いた作品です。最近では日本でも不二家が賞味期限切れの牛乳を使ったり、関西テレビが虚偽の報道をしたりと、企業の不正が大きな問題になっていますが、この映画でもそのような巨大企業の悪質ぶりが存分に描かれています。とはいえ、恐らくそのように企業の不正が表沙汰になるものは氷山の一角なのでしょう。この映画を観たとき、改めてそう思い知らされたような気がします。巨大な企業というものは、一度その良心の枷が外れてしまえば、巨額の資金を使ってどこまでも汚いことがやれるのでしょうから。

映画 の中でも、製薬会社は利益のためなら人の命などどうでもいいと思っている、武器商人と同じだということが語られていましたが、その結果、発展途上国にいる弱者がそんな強欲で野心的な人々の犠牲となって死んでいきます。もはや製薬会社の人々にとって、発展途上国の人々の命などただのガラクタにしか過ぎないのです。自分たちの利益さえ確保できれば、いくら人が死んでしまっても構わないという理念の上に行動を起こしていくわけです。

製薬会社のように人間の命を守るために存在しているような企業は、悲しいかな、一度その企業が目的を逸れ、自分の欲望と野心のために突き進みはじめると、そこには多くの犠牲者が生まれてしまうのだと痛感しました。そのような恐ろしい事件が二度と起こらないためにも、 映画 を通じてこのようなこの世の闇の部分にどんどんスポットライトを当てていってもらいたいものだと思いました。

一応、技術的な側面から話をさせてもらうと、ぼく個人としてはこの映画が余り好きにはなれませんでした。 映像 にリアリティを持たせるためなのでしょうか、全てのカットをハンディカメラで撮影したかのように手ぶらやノイズを入れているのですが、それが観ていてなんだか落ち着かなかったのです。画面はいつもふらふらと揺れているし、ワンカットワンカットが異様に短いので、最後まで集中して観るのが至難の業でした。恐らく編集はかなり複雑な作業になっただろうと思いますが、正直なところ、そんな面倒なことをしなくても良かったのではないかと思います。

かつて ブレア・ウイッチ・プロジェクト という映画で、全編をハンディカメラで撮影し、実際に起きた事件をそのままハンディカメラで収めたかのように装って観客をうまく騙しましたという例がありますが、この 映画 は別にそんなことをする必要はないわけですから、少し演出が過ぎたのではないかという気がしました。もっとも、これはあくまでぼくの個人的な趣味の問題だと思いますので、これで映画の良し悪しをこれで決めるわけにはいかないでしょうが。

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ナイロビの蜂